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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第34章 第十三話 【花待ち月の再会】 其の参

―京屋の旦那様―。
最初、中年の番頭は、商売敵で自分の主と犬猿の仲でもある京屋の主がなにゆえ唐突にやってきたのかと訝しげなまなざしであった。
しかし、市兵衛のこのひと言だけで、いかにも小心そうな番頭を震え上がらせるには十分であった。
―例の件で京屋市兵衛が来たといやあ、こっちの旦那にはすぐ判る。
相変わらず市兵衛の声はどこまでも冷ややかである。
哀れな番頭は泡を食って、その場から一刻でも早く逃れたいというかのように主を呼びに奥に引っ込んだ。
最初、中年の番頭は、商売敵で自分の主と犬猿の仲でもある京屋の主がなにゆえ唐突にやってきたのかと訝しげなまなざしであった。
しかし、市兵衛のこのひと言だけで、いかにも小心そうな番頭を震え上がらせるには十分であった。
―例の件で京屋市兵衛が来たといやあ、こっちの旦那にはすぐ判る。
相変わらず市兵衛の声はどこまでも冷ややかである。
哀れな番頭は泡を食って、その場から一刻でも早く逃れたいというかのように主を呼びに奥に引っ込んだ。

