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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第31章 第十二話 【花見月の別れ】 其の弐
 緊迫した空気が流れる。お彩は固唾を呑んで、竹庵とおきわの様子を見守っていた。寝んねこにくるまったお美杷は大人しくしている。
「先生、いかがですか」
 竹庵は、ひととおり診察を終え、お彩が用意した盥で手を洗っている。先刻まで、どこから見ても酔っ払いの爺さんにしか見えなかったのに、流石に名医と謳われるだけはある。既に竹庵の顔に、酔いは微塵もなかった。
 お彩が心配そうに訊くと、竹庵は難しい顔で首を振った。いつもは豪放磊落な竹庵がこんな深刻な表情をすることは極めて珍しい。おきわの容体がかなり悪いのであろうことは容易に想像がつく。
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