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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第31章 第十二話 【花見月の別れ】 其の弐

お彩が訪ねたときも、竹庵は丁度、夕飯をつつきながら酒を飲んでいる最中であった。竹庵が在宅していたことに安堵しながらも、果たして、これほど酒の匂いをプンプンとさせている老医師に診察が可能かどうかという一抹の不安がかすめた。
だが、苦しんでいるおきわを放っておくことはできない。お彩は顔を紅くしている竹庵をせきたてるようにして長屋へと連れてきた。弥生の初めとて、吐く息が白く冷たい夜気に溶けてゆく。日中は陽差しが春めいてきたとはいえ、夜分はまだまだ冬並みの寒さだ。
とりあえず、手早く汚れた布団を代わりの清潔なものに換え、おきわを夜具に横にさせる。それを待って、竹庵が診察した。
だが、苦しんでいるおきわを放っておくことはできない。お彩は顔を紅くしている竹庵をせきたてるようにして長屋へと連れてきた。弥生の初めとて、吐く息が白く冷たい夜気に溶けてゆく。日中は陽差しが春めいてきたとはいえ、夜分はまだまだ冬並みの寒さだ。
とりあえず、手早く汚れた布団を代わりの清潔なものに換え、おきわを夜具に横にさせる。それを待って、竹庵が診察した。

