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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第31章 第十二話 【花見月の別れ】 其の弐

ゴボッと、嫌な音がして、鮮血が辺り一面に飛び散った。
「あ―」
お彩は、あまりの凄まじい光景に言葉さえ失った。口許から大量の血をしたたらせながら、おきわが倒れた。
その場のただならぬ雰囲気を察したのか、寝ていたお美杷が眼を醒まし、大声でむずかり始めた。お彩はお美杷を背に負うと、すぐにその脚で近くの町医者の伊東竹庵の住まいに走った。
幸いにも竹庵は診療所兼自宅になっている仕舞屋にいた。竹庵は名医だが、酒飲みなのが難点といえば難点ともいえる。この辺りでも評判の酒豪で、夜には茶代わりに酒を呑むとも云われていた。妻はとうの昔に失い、子もない竹庵は独り身である。
「あ―」
お彩は、あまりの凄まじい光景に言葉さえ失った。口許から大量の血をしたたらせながら、おきわが倒れた。
その場のただならぬ雰囲気を察したのか、寝ていたお美杷が眼を醒まし、大声でむずかり始めた。お彩はお美杷を背に負うと、すぐにその脚で近くの町医者の伊東竹庵の住まいに走った。
幸いにも竹庵は診療所兼自宅になっている仕舞屋にいた。竹庵は名医だが、酒飲みなのが難点といえば難点ともいえる。この辺りでも評判の酒豪で、夜には茶代わりに酒を呑むとも云われていた。妻はとうの昔に失い、子もない竹庵は独り身である。

