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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第31章 第十二話 【花見月の別れ】 其の弐

薬湯を煎じた独特の匂いが狭い家中に満ちている中、その一隅だけが彩りを添えて、ともすれば暗くなりがちな家の中の雰囲気を明るくしているようであった。
眼を醒ましたおきわは、そのことについては何も触れなかった。おきわは一日中を殆ど床の中に寝たきりで過ごしている。そんな彼女は、日に幾度となく大切にしている雛人形を眺めることがほぼ日課のようになっていた。
それゆえ、おきわが突如として出現した桃の花に気づいていないはずはないのだけれど、おきわが何も言わないので、お彩もまた問おうとはしなかった。だから、おきわが桃の花に気づいていたのかどうかは定かではない。
眼を醒ましたおきわは、そのことについては何も触れなかった。おきわは一日中を殆ど床の中に寝たきりで過ごしている。そんな彼女は、日に幾度となく大切にしている雛人形を眺めることがほぼ日課のようになっていた。
それゆえ、おきわが突如として出現した桃の花に気づいていないはずはないのだけれど、おきわが何も言わないので、お彩もまた問おうとはしなかった。だから、おきわが桃の花に気づいていたのかどうかは定かではない。

