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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第31章 第十二話 【花見月の別れ】 其の弐
 四半刻ほどして再び帰ってきた時、おきわは既に眠っているのか、眼を閉じて横たわっていた。お美杷は、はしゃぎ疲れたのか、これもまた、その隣の布団で寄り添うようにあどけない寝顔を見せていた。
 お彩は、二人を起さないように、物音を立てないようにして、片隅の小箪笥の上に桃の花を活けた。家中を探しても花瓶のような気の利いたものは見当たらないので、徳利に桃のひと枝を入れる。
 時間潰しのついでに近隣の花屋で買ってきたのだ。
 薄桃色の可憐な花が一輪傍らにあるだけで、色褪せて古びた雛人形がにわかに生彩を帯びて華やかに見えるようになった。
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