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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第31章 第十二話 【花見月の別れ】 其の弐

長屋の住人たちは皆、お彩は実家のある村に里帰りし、そこで身二つになったのだと信じている。
「折角、お彩ちゃんみたいな良い嫁さんを貰って、子どもまで授かって、いよいよこれからっていう矢先に池に落ちておっ死んじまうなんて、伊勢さんもどこまでもついてないね。何しろ、おきわさんのところは母一人子一人だし、伊勢さんは孝行息子だったから、おきわさんも伊勢さんを心底頼りにしてたのさ。それがあんな死に方をされちまって、おきわさんまでが伊勢さんの後をそのまま追うことにならなきゃ良いがって、うちの亭主とも話してたんだよ」
おさきは滅法人の好い女だけれど、この喋り好きには、いささか閉口してしまう。
「折角、お彩ちゃんみたいな良い嫁さんを貰って、子どもまで授かって、いよいよこれからっていう矢先に池に落ちておっ死んじまうなんて、伊勢さんもどこまでもついてないね。何しろ、おきわさんのところは母一人子一人だし、伊勢さんは孝行息子だったから、おきわさんも伊勢さんを心底頼りにしてたのさ。それがあんな死に方をされちまって、おきわさんまでが伊勢さんの後をそのまま追うことにならなきゃ良いがって、うちの亭主とも話してたんだよ」
おさきは滅法人の好い女だけれど、この喋り好きには、いささか閉口してしまう。

