この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第31章 第十二話 【花見月の別れ】 其の弐

「もう春だねえ」
おさきは、空を振り仰ぎながら言った。その声は、いつになく感慨深げである。と、おさきがお彩の手にした洗濯物を見て、眉をひそめた。
「おきわさん、また吐いたのかい」
「ええ。ここのところは大分落ち着いているようだったので、安心してたんですけど」
お彩が小さな声で応えると、おさきが吐息混じりに言った。
「それにしても、伊勢さんがこんなに呆気なく亡くなっちまうなんて、おきわさんもさぞ気落ちしてることだろうねえ。私しゃア、伊勢さんやあんたら夫婦があんたの実家(さと)で達者にやってるものだとばかり思ってたものだから、あんたが一人きりで帰ってきたときには、もうびっくりしたよ」
おさきは、空を振り仰ぎながら言った。その声は、いつになく感慨深げである。と、おさきがお彩の手にした洗濯物を見て、眉をひそめた。
「おきわさん、また吐いたのかい」
「ええ。ここのところは大分落ち着いているようだったので、安心してたんですけど」
お彩が小さな声で応えると、おさきが吐息混じりに言った。
「それにしても、伊勢さんがこんなに呆気なく亡くなっちまうなんて、おきわさんもさぞ気落ちしてることだろうねえ。私しゃア、伊勢さんやあんたら夫婦があんたの実家(さと)で達者にやってるものだとばかり思ってたものだから、あんたが一人きりで帰ってきたときには、もうびっくりしたよ」

