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琥珀色に染まるとき
第12章 幸福な憂心のまま

「ん、あ、んん……」

 どちらからともなく舌を絡めた。彼の熱に口内を侵され、身体中の細胞が悦んでいる。奥からとろりと溶け出してくる欲情を自覚するほどに。
 もどかしそうに太ももをさする大きな手が、Tシャツの裾をまくり上げようとする。見られたくないものが晒されてしまう。

「や、ぁ……」

 太ももの奥に伸ばされたその手が、ふと、あるところで止まった。なにかを確かめるように蠢いている。

「なるほど」

 触れ合う唇の間にこぼされた囁きはどこか愉しげだ。ショーツのサイドを頼りなく支える紐を弄りながら、彼は口角を上げた。

「こんなの履いてたのか」
「ちが……ぅ、ん……」

 それは、“予備”に持ってきたもの――と言いたいのに、すぐに唇を塞がれて否定する隙を与えてもらえない。朝つけていた普通のショーツは、彼の“いたずら”で濡れてしまったから、仕方なく替えたのだ。
 だが、もはや否定の言葉などなんの意味も持たない。こうなることを予想、むしろ期待していたのは、自分自身なのだから。

「見せてごらん」
「あっ」

 腰のくびれを掴まれ、彼に跨った状態で膝立ちさせられる。ずり落ちるTシャツの裾を胸下までめくられると、黒の紐ショーツだけの卑猥な下半身が晒された。

「いや……」
「お前のイヤイヤはあてにならない」
「そ、そんなこと……んっ」

 Tシャツに視界が覆われたかと思えば、そのまま万歳して頭から脱がされた。

 窓から注がれる昼下がりの陽が、明かりのついていない薄明るい部屋に陰影をもたらす。そこに浮かび上がる、シースルーの下着姿の肉体は、初めてベッドをともにした日より少しでも女の色気を帯びているだろうか。
 そんな心配を知ってか知らでか、まぶしいものを前にして目を細めるような仕草をする彼。その視線に舐められた肌は粟立ち、じゅくり、と身体の奥でなにかが溢れた。

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