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琥珀色に染まるとき
第12章 幸福な憂心のまま

「なに考えてるんだよ」
「え……あっ」

 腰を掴まれたと思えば、ひょいと抱き上げられ、向かい合う体勢で彼のひざの上に乗せられた。温かな手のひらが太ももをまさぐる。それまでの穏やかな会話が嘘のように、がらりと空気が変わった。
 その目は、もう雄のそれになっている。この男の欲望には底がないのだろうか。しかし会うたびにこう何度もしていたら、いつか飽きられてしまうかもしれない。

「また、するの?」
「しないよ」
「……そう」
「お前が嫌なら」
「え」
「嫌か?」
「い、いやとか、そういうわけじゃないけど……だって……」

 しどろもどろになる様子を、彼は愉しげに眺めている。

「私じゃ、物足りないかなって」

 一瞬目を見開いた彼は、突然笑い出した。

「そりゃ足りてるさ。でも、もっとほしくなるんだよ。お前が可愛くて」
「…………」

 ひかえめに目を合わせれば、その綺麗な瞳は優しげな色をまとっていた。涼子が無言で頷くと、彼はにやりと口角を上げる。

「では遠慮なく」
「え、あ……」
「手加減はするよ」

 やけに色気のある低音と妖艶なまなざしに戸惑う隙もなく、腰を引き寄せられ、鼻先が触れ合いそうな位置まで顔を近づけられる。唇を舐めるように見つめるその伏し目に、芯が疼いて勝手に声をあげそうになり、思わず彼の広い肩を強く掴んだ。
 薄く開かれた彼の唇が、ゆっくりと焦らすように自分のを覆う瞬間、涼子はそっとまぶたを下ろした。

「ん……」

 後頭部を支えられながらの優しい口づけ。柔らかな唇の感触と熱い吐息に、一気に脳が痺れた。

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