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琥珀色に染まるとき
第12章 幸福な憂心のまま

***
「ん……西嶋さん……?」
素肌を這いまわった唇、熱く濡れた舌、大きな手の感触、硬い灼熱に体内をかき回され揺さぶられた疼きがまだ残り、思うように身体を動かすことができない。
ふと、背中に感じていたはずのぬくもりがないことに違和感を覚え、涼子は薄くまぶたを開き、寝返りをうった。
とろけるような情事の余韻を残す広いベッドに、彼の姿はない。甘い倦怠感に負けてまた自分だけが眠ってしまったのだと気づき、力の入らない身体をのろのろと起こす。
体力に自信のある涼子でも、これだけ何度も求められれば連続して押し寄せる快感の波に抗うことなどできず、そのたびに意識の底へ沈みこむしかなかった。
寝室のドアが開く音がした。振り返ると、そこには西嶋が優しい微笑みを浮かべて佇んでいる。
「朝食できてるけど食べるか? まあ、ほぼ昼食だけどな」
「あ、うん」
曖昧に答えながら、サイドテーブルに置いてある携帯電話を確認してみる。彼の言うとおり、もう昼になろうとしていた。
「やだ……寝すぎちゃった。ごめんなさい」
素肌を隠すように胸の前で握りしめていたスリップをさっとまとい、乱れた長い髪を手ぐしで片側に寄せる。
「疲れてたんだな」
「そうね。誰かさんのせいでね」
「悪い悪い」
苦笑しながらそう返され、目を細めて恨めしい視線を送れば、彼は愉快そうに肩を揺らした。

