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わたしの肢体
第2章 秋芳 善(15)
 今朝の出来事が善の脳内で再生される。
 父親と、百の、他愛もない親子喧嘩の場面が。
 4人の子供を育てる一家の長としての威厳というのか、怒鳴り慣れした父親のドスの効いた声が善の耳に騒音として入ってきた、あの、リビングでの出来事が。


 百の代わりに善は送信ボタンをタップし、そのままスマートフォンを制服ズボンの後ろポケットに滑り込ませた。


「さっさと行けよ」


 内心では百にごめんなと謝りつつも、善は教室内での自分の地位を優先した態度を弟に対して取った。


 百は普段優しい兄の豹変ぶりにやや困惑気味だったものの、家の中のように反論したりせず、黙って「ごめん、ありがと」とだけ言うと、さきほどと同じようにひょこひょこ右足で床を蹴って、左足のつま先を引きずりながら、松葉杖を頼りに教室の後ろのドアから出て行った。


 ヒッヒッと堪えた笑い声が黒板の前から教室全体を包んで百の背中に突き刺さる。


 けれども、百は慣れっこだった。
 小学生の頃はからかわれてよく泣いていたけれど、中学に入学した今となっては慣れるしかないし、もっと言えば、慣れてしまう前に自分で状況を打破していくしか自分の精神を保ち守っていく術はないと理解してしまった、というのもある。



 なぜならば百の左脚は3年も前から、自力での二足歩行を支えるだけの能力を失ってしまっているのだから。




「あれ、ぜんの弟だったんだ」






 百の背中が廊下の向こうに消えてしまった頃、善の隣の席についている、百と似たような坊主頭の男子生徒が善に向けて声をかけた。


「え?」

 
 善は振り向き、クラスメイトの顔を見つめる。
 正確には同じ部活の友達、といったほうがいいかもしれない。



「あれ、おれのおんなと同じクラスのはずだよ。たぶん友達」





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