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いつ見きとてか 恋しかるらむ
第3章 『 抹茶 水ようかん 』

『しんどいこともあるけれど、好きな仕事が手につかない……。
理由は……ご主人様……。
仕事上、同じチームだから、顔を合わせないわけにはいかないわけで……。
お互い、大人だから。
もちろん、おくびにも出さないけれど。
ちょっとした瞬間に交わす視線にドキドキしたり、落ち着いた声にときめいていたから。
その瞬間は、仕事中の……ちょっとした癒しだったなあ……なんて思えて。
そうすると、胸がぎゅっと……痛くなる。
なんとか顔を合わさないように仕事をしている。
メールで済ませられるものは、すべてメール。
向こうも……その方が都合がいいみたい(苦笑)
仕事が終わると……もうぐったり。
心がずっと緊張しっぱなしなんだと思う。
晩ごはんの支度をしていて、玉ねぎ、切っているわけでもないのに、涙がこぼれて。
ああ~、家族が近くにいなくてよかった……と、慌てて涙を拭いたりして。
……仕事、やめようかな。
好きな仕事をこんな気持ちで続けることに、モヤモヤしてる。
これからのこと、ちゃんと考えてみようと思う。』
……わたしも、モヤモヤしてしまった。
ご主人様と奴隷の関係性については、経験がないからわからないけれど、好きな人を想う気持ちはわかる。
別れたのに、まだ気持ちのあるその人を毎日見るのはツラすぎると思った。
自分の視界……世界に存在がなければ、忘れる速度は早まる。
でも、Sachiさんの場合は、そうはいかない。
独身同士であっても、社内恋愛の破局はツラいけれど、Sachiさんは既婚者で……しかも恋愛のようなそうでないような……SMの関係だから、より複雑だ。
誰かに相談できるわけでもない。
自分でなんとかするほかない。

