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いつ見きとてか 恋しかるらむ
第2章 『 シフォンケーキ 』

老舗のサブレの店で、焼きたての食パンとお目当てのあんパンを買ったわたしは、のんびりと電車に乗って帰宅した。
もちろん、帰りも車窓から見える海を見つめた。
行きに見た海とは違う表情を見せ、行きと同じようにすぐに見えなくなってしまった。
その刹那に、いつもいつもなぜか引き込まれてしまう。
家に帰ったわたしは、食パンとあんパン、そして黒檀の箸をテーブルに置いた。
今日の散歩の戦利品だ。
あっ。
わたしは、ガサゴソとバッグの中を探って、スマホを取り出した。
スマホをテーブルに置いて、食器棚の引き出しに手を伸ばした。
わたしは、いくつかのランチョンマットの中から若草色のランチョンマットを取って、それから白磁の小皿も一緒に、テーブルまで運んだ。
ランチョンマットに白磁の皿を置く。
黒檀の箸のシールを剥がして、箸を洗った。
洗い終わってから、水滴をすべて拭き取り、箸を白磁の手前に置いた。
そして、パシャリ、スマホで写真を取った。
わたしは、自分のブログのページに繋いだ。
えっ?
ウェルカム欄に
「新着」
赤い文字が点滅していた。
まさか……。
Sachiさんから?
わたしは慌てて、ウェルカム欄をタップした。
ページが切り替わって、わたしの目は、送信者のところで止まった。
そこには、Sachiさんの名前があった。
『メッセージ、ありがとうございます。』
先頭の一文が目に飛び込んできた。
『羨ましく思う……?
もしかして、Mさんかな?
いきなり、あれこれは話せないけど
少しずついろんなことが、話せるといいよね』
Sachiさんからのメッセージは、こんなふうに綴られていた。
なんのことはない、ごくごく普通の挨拶文だったけれど、わたしにとっては、初めてもらったメッセージだ。
しかも待っていたSachiさんからの……。
わたしの心は、自分でも説明がつかないなんともいえないものだった。
つかみどころがなく、そしてふわふわとした感じがした。
そのふわふわした気持ちは、落ち着きのないものではなかった。
甘い香りを漂わせるシフォンケーキのような……ふんわりした心地よいものだった。

