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◇なななの短編◇
第12章 なぁなぁな2人

応答はなかった。
「へぇ……」
ぽつりと智は一人で呟く。
今日は来ない日、ですか。
小さく肩を落として鍵穴に鍵を指そうとしたら、後ろから、おっ!と声がした。
「すげぇ〜〜ぴったり」
振り返った先に佇む彼。
着慣れたスーツ姿。
整えられた髪。顔もまぁ悪くないし、物言いもハキハキしている。
所謂、好青年ってやつだ。
「おかえ…り」
智がそう言い淀みながらそういうと、男は…樹(いつき)は、ニコリと笑った。
「ただい…ま」
わざと、言い方を真似して。
智はそれに気付いて、すぐに振り返ると手早く扉の鍵を開けた。
「────…」
ドアノブを掴もうとしたところで、樹が後ろから手を伸ばして扉を開ける。
「いたっ……最悪っ….」
「なに…?」
「いや、静電気」
「ああ…」
智は緩く返事をする。
そして、樹が扉を開けるとそのまま素早く部屋に入った。

