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◇なななの短編◇
第11章 さっぽろ雪まつり!(B,近甘,ᙠ)

「ったく……世話が焼ける」
ボソと頭上から降って来た言葉。
微かに香るタバコの匂い。
満員電車の中、角に私を追いやった店長は私を包み込むようにして目の前に立つ。
「っ……………」
突然のことに、胸がドキッと鳴って顔が火照るのを感じた。
近い……
周りに人がいるのに、思わず彼の服をギュッと掴む。
今、カップルっぽく見えてるんだろうか。
この人、好きとか全然言わないし、手とかも一切繋いでくれないから、こういう些細なことでも嬉しいとか思ってしまう。
まぁ……どうせ、店長は何とも思ってないんだろうけど。
少し彼の様子が気になって、私は彼の服を掴んだままゆっくりと顔を上げた。
「っ………──────」
まさかのバチっと目が合って慌てて俯く。
またドキドキと心臓が鳴り出したのを堪えようとしていると、店長は少し屈んで私の耳元で小さく、桜……と囁いた。

