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Only you……番外編
第16章 恋の種をまこう

用を済ませ部屋へと向かう。副社長室のプレートが視界に入ってきたくらいで、部屋から人が出てくるのも同時に目に入った。それは若い女性社員だった。いつか妙な噂話を私に話した、あの人に間違いない。

軽く会釈をしてすれ違う。そして私は彼女の頬に涙の後があるのを見た。きらりと輝く光の筋を

「副社長……」

部屋へと戻るなり、私は副社長へと詰め寄った。副社長は何事かと驚き、顔を上げた。

「なんだ? 何かあったのか?」

悠々と尋ねてくる副社長に、私は無償に腹が立った。

「さっきの女性……また捨てたのですか?」

単刀直入にそう言う。副社長に遠まわしな表現を使えば誤魔化されてしまうからだ。

「……人聞きの悪い。一度抱いただけだって――」

「それを捨てたと言うんです!」

私はいつになく興奮していて、ダンっと勢いよく机を叩いた。それに対して副社長はやれやれと溜息をつく。

「そんなこと、りんには関係ないだろう」

視線はパソコンの画面を見つめたまま、副社長は言い切った。

私はカッと頭に血が昇ってゆくのを感じた。そして目頭に熱が集中してくる。

「……関係あります……!」

麻都さんは顔を上げた。

私は零れそうになる涙を必死に堪えていた。

「私は、麻都さんが好きです」

麻都さんが立ち上がり、私の元へと歩み寄ってくる。

そして、静かに耳元で囁いた――。

「じゃあ、やってみる?」

 パンッ――。

私の掌が風を切った。部屋に乾いた音が響き、私は叫んだ。

「馬鹿にしないで!!」

頬を涙が伝った。冷たい涙が伝っていった。

麻都さんは赤くなり始めた左の頬に手を添えて、唖然としていた。まるで意味が分からないとでも言うように。

「いつか必ず、運命の人が現れるんです! たった一人の。その人のためにも、自分を傷つけるのは止めてください!」

私は麻都さんの頬を染めた手を胸の前で拳へと変えた。

麻都さんはふっと笑った。

「少女趣味……」

「分かってます。シンデレラシンドロームだって言われても構いません」

私はくるりと体の向きを変えると、ガタガタと大きな音を立てて席に着いた。涙はまだ乾ききっていなかった。
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