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Only you……
第3章 麻都 2

俺はそこそこ酒は強い方だ。基本的にはワインが好きだが、嫌いな種類のものは今まで出会ったことは無い。とりあえず一通りの酒を飲んだことがある。

つまり、俺のため息の理由は、酒が嫌いだからではない。

「さぁ! 今夜は飲み明かすわよぅ!!」

ジョッキにビールを溢れんばかりに注いで、喉を鳴らしながら美味そうに飲む――そいつの名は渥美 りんだ。俺はりんの酒癖の悪さを知っている。それが怖かったのだ。

「ほらぁ、麻都さんも飲んで、飲んで!」

弱いくせに、飲みたがる。もう早ろれつが回らなくなっているりんが、俺の背中をばしばし叩きながら、ビールを押し付けてきた。渋々口をつける。しかし、りんと飲む酒ほど不味いものはないだろう。

「お、ねぇちゃんいい飲みっぷりだねぇ」

隣のおっちゃんが話し掛けてきた。

「あ~りがとぅ!!」

隣のおっちゃんと盛り上がり、「一気! 一気ィ」と叫びながら酒を煽っていた。

俺はというと、早く帰りたかった。

「兄さんも大変ねぇ」

店のおばさんが声をかけてきた。たびたび来ては大騒ぎしていくので、もう顔は知られている。

「えぇ、ホントに」

苦笑しながらつまみのから揚げに箸をつける。腹がくぅくぅ鳴っていた。明の作る夕飯が今では懐かしい。

――今ごろ明、何してるのかなぁ……。

――アイツ、テレビとか見ないし、音楽も聴かないしなぁ。

――もう寝てるかな……。

腕時計に目を落とすと既に0時をまわっていた。りんに目をやれば未だに激しく飲んでいた。一緒だったおっちゃんはもう潰れていた。
 
――そろそろ帰らしてくんないかね……。

これだからいつもりんと出かけるのは断っていたのに。りんは嫌なことがあると飲みたがる。彼氏と喧嘩したとか、競馬でスッたとか……。その度に俺はりんにお供させられている。

今回もそんなもんだろう……。
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