この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
Only you……
第3章 麻都 2

「ちょ~っと、麻都さぁん」
――ほら来た。
「あのねぇ、孝之ったらぁ」
孝之とはりんの彼氏だった。もうかれこれ3年ほど付き合っているようだ。今回はその孝之となにかあったらしい。何だか喚いているが、とりあえず聞き流しておく。どうせ明日には覚えていないんだから。
「ちゃ~んときいてるぅ~?」
「はいはーい、聞いてますよ……」
「それれねぇ……」
それから延々1時間半、りんは喋りつづけた。そして突然、パタリと眠りについた。
店を出るとタクシーを捕まえ、りんを家まで運ぶ。鍵は鞄の内ポケットに入っている。それを勝手に取り出しりんのアパートへと入り、ベッドに横たえると、ベッドの脇に水と2日酔いの薬を置いて出た。
待たせておいたタクシーに再び乗り込み、今度は自宅へと、ようやく帰宅だ。病み上がりの身に鞭打つような1日だった。首をひねるとコキコキと音がした。
「ただいまぁ……」
明はもう寝ているはずだから、小声で呟く。ぐったりと玄関に座り込み、ため息を吐き出す。
「お、おかえりっ」
「ほへっ?」
振り返ると、寝たと思われていた明が後ろに立っていた。パジャマを着てはいたが、一度眠って起きたようには見えない。
「あれ? 寝てたんじゃ……?」
「うん。寝ようと思ったけど、何か眠れなくてね」
寂しげに笑う明が急に愛しく思えて、きつく抱きしめた。
「痛いって」
「うん。ごめん」
そう言いながらも、俺は明を拘束する力を緩めようとはしなかった。明も特に抵抗しようとしなかったので、俺は調子にのってさらに抱きしめ続けた。
「いい加減にしろっ!」
「いってぇ!!」
脛を思いっきり蹴られて、俺はケンケンをしながらぐるぐる回った。明はそんな俺を置いてさっさと寝室へと行ってしまった。
――俺がいなくて寂しかった?
――ちょっとはそう、思ってもらえたのかな?
シャワーを浴びると、俺も明の隣に潜り込んだ。

