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Only you……
第3章 麻都 2

「ちょ~っと、麻都さぁん」
 
――ほら来た。

「あのねぇ、孝之ったらぁ」

孝之とはりんの彼氏だった。もうかれこれ3年ほど付き合っているようだ。今回はその孝之となにかあったらしい。何だか喚いているが、とりあえず聞き流しておく。どうせ明日には覚えていないんだから。

「ちゃ~んときいてるぅ~?」

「はいはーい、聞いてますよ……」

「それれねぇ……」

それから延々1時間半、りんは喋りつづけた。そして突然、パタリと眠りについた。


店を出るとタクシーを捕まえ、りんを家まで運ぶ。鍵は鞄の内ポケットに入っている。それを勝手に取り出しりんのアパートへと入り、ベッドに横たえると、ベッドの脇に水と2日酔いの薬を置いて出た。

待たせておいたタクシーに再び乗り込み、今度は自宅へと、ようやく帰宅だ。病み上がりの身に鞭打つような1日だった。首をひねるとコキコキと音がした。

「ただいまぁ……」

明はもう寝ているはずだから、小声で呟く。ぐったりと玄関に座り込み、ため息を吐き出す。

「お、おかえりっ」

「ほへっ?」

振り返ると、寝たと思われていた明が後ろに立っていた。パジャマを着てはいたが、一度眠って起きたようには見えない。

「あれ? 寝てたんじゃ……?」

「うん。寝ようと思ったけど、何か眠れなくてね」

寂しげに笑う明が急に愛しく思えて、きつく抱きしめた。

「痛いって」

「うん。ごめん」

そう言いながらも、俺は明を拘束する力を緩めようとはしなかった。明も特に抵抗しようとしなかったので、俺は調子にのってさらに抱きしめ続けた。

「いい加減にしろっ!」

「いってぇ!!」

脛を思いっきり蹴られて、俺はケンケンをしながらぐるぐる回った。明はそんな俺を置いてさっさと寝室へと行ってしまった。

――俺がいなくて寂しかった?

――ちょっとはそう、思ってもらえたのかな?

シャワーを浴びると、俺も明の隣に潜り込んだ。
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