この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
Only you……
第3章 麻都 2

ブルルルッ――
気分良くエンジンをかけ、マンションの地下駐車場を出発する。今朝は明と話していない。と、いうのも、明が爆睡していたので俺はそのまま置手紙を残してきたからだ。朝食は一人暮らしのときと変わっていないが、サラダには明特製のドレッシングをかけるようになった。トーストにつけるジャムも、明が作ったものだ。随分と充実した内容になったもんだと、俺自身思う。
会社まで近くなったおかげで、帰宅時間が早くなり明といられる時間が増えたと思う。もともとそれが狙いでもあったから、万事オッケーだ。
いつもの俺の縄張へとたどり着く。先に来ていたりんがドアを開ける音で顔をあげた。
「あ、副社長。大丈夫でしたか?」
立ち上がりかけよりながら、俺の鞄を受け取り、上着を脱がしてゆく。
「ん、大丈夫。ただの風邪だよ」
俺は笑って答えた。
「……本当ですか?」
「ホントだよ」
一瞬ぴくりと眉が痙攣を起こしたのに、りんは気付いただろうか。俺が嘘をついたときの癖だ。――きっと、付き合いの長いりんのことだ、気付いたに違いない。
「……分かりました。無理はしないで下さい。アレが再発しては困ります」
――やっぱりバレてるか。
「誰が困るんだ?」
「私です」
あっさりと言われた答えに、俺は「はいはい」と返事をしておいた。俺はいつもりんに助けられてきた。家族を失ってから、社長のおっさんと、その恋人の透真、それからりんは、俺の家族のようになっていた。
「昨日お休みになられた分まであるので、頑張ってくださいね」
りんの笑顔に恐怖する。こういうときは、嫌なことがあるに決まってる。
「はーい、頑張りますよ」
下手な役者のように棒読みの台詞。
「明くんとは、仲良くやってますか?」
「ん?」
突然話題を変えられ、俺は自分の席から身を乗り出した。

