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Only you……
第3章 麻都 2
冷や汗が全身を包んで、気持ち悪い。髪までぐっしょりだ。全身はだるくて、息をするのが辛かった。

これが後遺症だった。家族を失って、精神的に受けた傷。親族が離れていってえぐられた心の傷。友達に裏切られた傷。その塊がこれだ。

「勘弁してよ……まじで」

寝室の前にうずくまって呟いた。中の明は今、何を考えているんだろう。何を感じているんだろう。そして、これからどうするつもりなのだろう。

何も言わずに消えてしまうのだけは耐えられない。黙っていなくなってしまうのは、もう耐えられないよ……。

俺はそのまま、気を失ってドアにもたれかかった。



 ――ガチャ、ゴンッ

耳元でやや大きめの音がした。その音で、漂っていた意識が俺の中へと帰ってきた。上を見上げると、明がドアの隙間から俺を見下ろしていた。

「あ……」

すぐに閉めようとしたので、俺は反射的に明の服を裾を掴み、それを拒む。

「や、放せ。ってか何でいるのさっ!」

俺はしっかりと握ったまま、明が叫んだ後半の言葉の意味を考える。


――何でって?


――あ、もう朝なのか……。


「は、放して。オレのことはほっといて」

そんなに俺が嫌なのかな、明は。でも、俺は、明がいないと駄目なんだ。少なくとも今は。お願いだから、お願いだから――。

「もう……言わないから……行くな、よ」

自分でも驚いたが、声が震えていた。そして体も、震えが止まらない。

「たの、むよ……」

頼りないな、俺。守ってやるって言ったのに、嘘つきだな。こんなんだから、明に振り向いてもらえないのか。自業自得ってやつ? 心の中で自分を嘲笑う。

いつの間にか俺の頬を流れていた雫に、手をやる。水分さえも、俺から逃げてゆくのか。何もかもに見放された俺は、なんとちっぽけなものか。
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