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Only you……
第7章 麻都 4

「麻都、明くんは?」

おっさんにそう言われて、俺は初めて明のことをすっかり忘れていた自分に気が付いた。はっと立ち上がり、頬を冷や汗が流れる。

「その様子だと、忘れていたみたいだね」

透真が怪訝な顔をする。

俺は病室を飛び出した。

「また来る!!」

俺の後姿に、「もう来なくていいぞー!!」と言う声が飛びついてきた。



病院を出て車に乗り込む。自分でも驚くほど乱雑に駐車されていたそれは、昼間なら確実に苦情がきていただろう。

太陽はもう、姿を現していた。

昨夜飛ばしてきた道を、今日は制限速度をある程度守って走る。

俺の心中は穏やかではなかった。なぜなら、おっさんが倒れたということは、俺にのしかかってくる責任が大きくなることでもあるから。ついにやってきたのだ、会社を継ぐときが。早く俺が会社を継いで、おっさんにゆっくりと休養をとらせてやりたい。しかし、俺の方の準備が出来ていない。会社を継ぐ条件は、“愛し合う相手を見つけること”。

――俺は明を愛しているのか……?

――そもそも、愛してるとはなんだ?

――どこまでが恋で、どこからが愛なんだ……?


俺には何も分からなかった。そして、明を愛しているという確証すら持てない。

どうするべきか、どうあるべきか、それが分からない。


「……ただいま」

玄関に入っても、「お帰り」の声はなかった。足元にも、明の小さな靴はなかった。前までだったら考えられない。明が俺の帰りを迎えてくれないなんて、考えられなかった。

全身をいいようのない気だるさが覆っていた。やる気というものが全て何かに吸い取られてしまったようだ。

両足を引きずるように居間へ入ると、食卓テーブルの上に小さな紙切れが乗っていた。

「ペットショップに行きます。ご飯温めてください。明」

上手いとはいえない不恰好な字で、そう書かれていた。
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