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Only you……
第7章 麻都 4

「いつから?」
俺は手術室を見つめて聞いた。手術が始まってすぐに俺を呼んだわけではないだろう。
「3時間くらい……帰りにロビーで倒れてさ。救急車呼んで、いきなりここに運ばれて」
真っ白のドアの上には、赤いランプが煌々と照っている。
そのランプが、突然消えた。
ガラガラ――。
大きな音を立てて扉が開き、おっさんが眠った状態で運び出される。透真は飛びつくようにそこへ寄る。看護士が「今は薬で眠っています」と告げた。後から医者が数人の看護士たちと姿を現した。俺と透真は今度はそこへ縋る。
「先生!!」
その医者は、いつもおっさんを見てもらっている方だった。夜、もう帰ろうとしていたところにおっさんが運ばれてきたらしい。
「……心臓に原因不明の穴がいくつもあいています。血管もところどころに詰まっているところがあり、酸素が十分に回らず酸欠状態で倒れたようです」
一端そこで言葉を切り、俺たちの顔を交互に見つめた。
「痛みを相当我慢してきたようです。今は麻酔も効いていますが、これからは痛み止めを服用していくことになります」
おっさんは薬が大嫌いだった。飲んでも飲まなくても、いずれは死ぬのだといつも言っていた。
「佐伯さんの余命は……1ヶ月です」
俺は耳を疑った。それと同時に、やっぱりかと思う気持ちもあった。
1ヶ月。それが長いのか短いのかはわからない。それは個人の感じ方次第だろうから。しかし、俺にとっては明らかに短かった。
「は、はは……」
透真の頬を汗が流れた。全身が痙攣を起こしたように震えている。
「また、生きられますよね? 前だって、20まで生きられないって言われて、それでももう40を過ぎたんですよ?」
医者は苦しそうに俯いた。
「今までは奇跡でした。これからは……違います」
透真の体から力が抜け、俺は倒れかけた透真をなんとか抱きとめた。
「ブドウ糖を点滴して」
医者がそう看護士に告げると、車椅子が用意され、透真が運ばれた。俺は呆然とその場に立ち尽くしていた。

