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Only you……
第7章 麻都 4

「君のところでなんとか引き取れないかね?」
「そんな、無理よ。うちには子供が3人いるのよ? そのうえもう1人なんて……。あなたこそどうなのよ」
「私はまだ独身なんだぞ。子持ちなんて周りに何言われるか」
俺は部屋の隅で膝を抱えて小さくなっていた。大人たちは俺の存在を無視して話しつづける。俺を誰が引き取るかについて。みんなが拒否した。俺はみんなに否定された。
「お前、麻都くんのこと可愛がっていたじゃないか! うちの子供だったらとかなんとか言って」
「そ、そんなの、ただのお世辞に決まってるじゃない」
「ふん、どうだか。今更そんなこと言って」
もう限界だった。こんな所にいつづけるのは、もう限界だった。
「大体あの子、気持ち悪いのよ。同性愛者だかなんだかしらないけど、面倒見切れないわ」
「同感。手におえないよ」
「どうにかならないのかしらねぇ」
そんな時、あの人が現れた。
「麻都くん?」
俺は嫌な大人が声をかけてきたと思い、うんざりしながら顔を上げた。
「あ、おじさん」
俺はそこにいたのが唯一したっているおじだったので、少し安心した。
おじは同性愛者だった。昔は隠していたのだが、何年か前に恋人と同棲することをきっかけにカミングアウトしたのだ。それからは親戚一同に軽蔑されていた。しかし、俺にとっては唯一の理解者といってもよかった。
親戚は一斉に不快感を露にした視線を送ってきた。
「いい人を連れてきたんだ。あってみないかい?」
「……いいよ。行く」
俺はおじの後について玄関に行った。するとそこにはスーツを着た男が2人立っていた。
「初めまして、架上 麻都さんですね? 僕は佐伯自動車の社長秘書、東です」
整った顔立ちのモデルのような男が、お辞儀をした。
「こちらが社長の佐伯です」
隣にいたやや髪が長い男が紹介される。社長が俺に何の用だと思った。
「今日は架上さんが同性愛者だと聞いてやってまいりました」
今日はやたら俺の性癖の話になると思った。

