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理想と偽装の向こう側
第16章 懐古
「志信さん、お待たせ~!」


お皿に載ったご飯にカレーをかけて、満面の笑顔でテーブルに持ってくる。


「おっ!旨そう~!」


食欲をそそる匂いに、お世辞抜きで感嘆しながら、グラスには、甘いカクテル系のお酒を注いだ。


さっきの野菜切りの時のように、お互い向き合って正座する。


視線を合わせて


「いただきます!」


一口食べた瞬間、この上なく幸せだった。


「旨いっ!光花、凄い美味しいよ!」


本当に美味しかった。
正に家庭のカレーだけど、あと引いて止まらなくなる。


「本当?良かった!お母さん直伝のカレーなんだ」


笑顔で、そう言いながら光花もカレーを食べる。


「あ~上手く出来て良かった!」


「あっ!乾杯してなかった!カレーで頭いっぱいだったよ」


「ははは!そうなんだ!」


俺は光花にグラスを渡して


「お疲れ様!いらっしゃいませ!」
「お疲れ様です!お邪魔します」


「乾杯~!」


思い出に残る夜になりますように…
思いを込めて


「カチンッ!」


グラスを鳴らした。

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