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喘ぐなら、彼の腕の中で
第8章 2人の夜


*  *  *


「え!? ここ!?」


タクシーの運転手のオジサンと顔を合わせるのが恥ずかしくて、そそくさと莉央に続いて降りたけど

莉央がスタスタと歩くその先に、ドーンと縦に長い高層マンションが建っていた。


「1人暮らしじゃないの!?」
「1人」
「でもデカすぎ…」
「途中の階は1LDKの賃貸になってる」


カードキーを翳して、エントランスを抜ける。
一緒にエレベーターに乗り込み、外の夜景を見ながらぐるぐると考えを巡らせた。


……成績優秀で
歩合手当が上乗せされているとはいえ、普通のサラリーマンだ。

都内、しかも見るからに高そうな家に1人で住めるわけがない。


「………」


……うん、間違いない。
絶対親からもらってんな。

平然と19階で降りた莉央の後ろ姿を、じとーっと睨む。



実家から都心までは2時間くらいかかるから、私も莉央も1人暮らしをしている。

地元は神奈川県の南部にある、海に近い街。

莉央の実家は、その街でも指折りの金持ちだ。

敷地面積は、私の家の10倍はあるんじゃないだろうか。



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