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石榴(ざくろ)の月~愛され求められ奪われて~
第8章 第二話・参
―まさか、それが悪阻だとは考えてもみなかった。元々、初子の兵太を身籠もったときだって、悪阻なんて耳にはするけれど、他人事だった。それほど順調な経過を辿った初めての妊娠、出産だった。
 嘉門の子を宿したときに悪阻が烈しかったのは、心理的な状態も大きく起因していたのかもしれない。離れに閉じ込められ、夜毎、も男を迎えて慰みものにされるだけの日々に悶々とし、幾度涙を流したかしれなかった。
 自分が懐妊しているのではと疑念を抱いたのは、昨日の朝のことだ。
 源治と向かい合って朝飯を食べていた時、急に烈しい吐き気がせり上げてきた。
 慌てて土間に降りしゃがみ込んで咳いていたら、少し戻してしまった。源治がすぐに来て、不安げに背をさすってくれた。
―大丈夫か?
 源治をこれ以上心配させたくなくて、作り笑顔で頷いたけれど、勘の鋭い男だから、何か気付いているのかもしれない。
 胸の奥底に沈んだ鉛のような想いは、なかなか消えないまま、日は徒に過ぎゆく。
―どうしよう、一体、どうすれば良いの?
 自分に問いかけてみても、応えは出ない。
 心にもやもやとしたものを抱えているのも厭で、昨日の昼下がり、花ふくが昼時の忙しい時分を過ぎたときに休みを貰い、近くの産婆の許を訪ねた。
 診察結果は、やはり懐妊だった。もう五十近い産婆は淡々とお民に告げた。
―もう四月(よつき)に入ってるよ。
 帰りは花ふくまでどうやって帰ったか判らない。
 夜、源治がいつものように迎えにくるまでの時間が長いようにも、短いようにも感じられた。
 源治の顔を見るのが怖かったのだ。しかし、源治が何も知るはずもなく、ただいつものように優しく、茶目っ気たっぷりの良人を見ていると、涙が出そうになった。
 花ふくからの帰り道、二人で並んで歩きながら、お民が源治の横顔をぼんやりと眺めていると、源治が笑った。
―何でえ。俺の顔に何かついてるか?
―何もついてなんかいませんよ。
―じゃあ、俺の男っぷりに今更気付いて、惚れ直したってところか?
 源治の揶揄するような言葉に、お民は良人を肘でつついた。
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