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石榴(ざくろ)の月~愛され求められ奪われて~
第8章 第二話・参
 お民はあれから、健気に何事もなかったようにふるまっている。源治は己れの配慮が足りなかったことが、この事件を招いたのだと我と我が身を責めた。
 あの事件以来、花ふくからの帰りは必ず源治がお民を迎えにいくことになった。
 何も知らぬ花ふくの客たちは、
―源さんも恋女房の送り迎えまでするとは、こいつァは、よっぽどお民さんにイカレちまってるんだろなぁ。
―俺だって、女房がこんな天女みてえな別嬪なら、送り迎えだってすらあな。
―何言ってやんでえ。手前ところの嬶ァは天女どころか熊のようなご面相じゃねえか。お前には悪ィが、あのご面相なら、夜道で近づいた不心得者の方がびっくりして逃げ出すわいな。
―違えねえ。
 と、好きなことを言って、大笑いしている。
 夜は、相変わらず枕を並べて寝てはいても、源治がお民を抱くことはない。
 時折、お民がひどくうなされることがあった。夜半にうわ言を言いながら、苦しむのだ。
―お民、お民、しっかりしろ。
 源治が見かねて揺り起こすと、お民は怯え切った表情で源治に縋りついてくる。
―怖い、お前さん。私、怖い―!!
 何に怯えているのか、どんな夢を見るのか、幾ら問いただしても、お民は応えなかった。
 恐らくは、三ヵ月前に拉致されたときの恐怖が見せる悪夢なのだとは判っていても、お民が何も話さない以上、源治も何もしてやれない。ただ怖い夢を見るのだと、儚げな笑顔で言うばかりだ。
 そんな時、源治は何をしてやることもできぬ自分が腹立たしく、情けなかった。
 そういったことを除けば、二人の生活は以前と何も変わらぬように見える。朝になれば、源治は花ふくにお民を送っていき、その脚で自分もまた仕事に出かけた。夜はたいていは源治の方が先に帰っているので、店が閉まる少し前に、源治がお民を迎えにゆく。
 お民は相変わらず花ふくの人気者だし、美貌のお民目当てに通ってくる客は増える一方だ。家でもお民の態度に格別変わったことはなかった。ゆえに、源治もまた、お民の懊悩を気付いてやることができなかったのも致し方なかったのである。
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