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石榴(ざくろ)の月~愛され求められ奪われて~
第8章 第二話・参
 あろうことか、お民の首筋には紅い痕が残っていた。あれが何を意味するものか―、源治は考えたくもないが、強い力で首を絞められた痕のようなものに違いない。
 石澤嘉門は、お民を殺すつもりだったのだろうか。卑怯なやり方で我が物とし、ひとたびは解放した後もなお忘れ得ず、略奪紛いのことまでして手に入れようとした女。そこまで惚れ込んだ女を、手に掛けるつもりだったというのか。
 源治には、考えられないことだ。惚れた女であれば、膚を合わせることを無理強いはしたくないし、ましてや靡かぬからといって、その生命を奪うなど論外だ。つまりは嘉門のお民への恋情がそれほどまでに深く烈しいものだとないえなくもないが、自分のものにならねば、殺すという思考は間違っている。
 烈しい愛は時として憎しみにも変わる。憎しみ想う心の裏返しだ。
 しかし、源治は、そのような女の愛し方は理解できなかった。惚れているのであれば、尚更、大切にしてやりたい。その心が自然とやわらぐまで、春の光が根雪を溶かすように辛抱強く待ち続ける、それが源治の考える愛し方であった。
 嘉門の烈しい愛は、お民への並外れた執着を物語っている。それは源治でさえ、空恐ろしいと思うほどの強さだ。だが、そこまで惚れているのであれば、どうしてもっと大切にしてやろうと思わないのだろう。己れの欲望のままに連れ去り、犯し、嘉門は常に自分の作った檻にお民を閉じ込めようとしている。その狂気じみた愛し方は一種、異様であった。
 あのときのお民の姿を思い出すにつけ、源治は抑えがたい怒りとやるせなさに襲われる。
 武士は、町人相手なら何をしても許されると考えているのだろうか。卑怯な方法でお民を一年近くも側妾として慰みものにしただけでは気が済まず、またしても連れ去り、手込めにした男。許されるならば、あの男をこの手で気が済むまで殴ってやりたい。お民の味あわされた屈辱や哀しみの分まで、存分に殴ってやりたい。
 だが、哀しいかな、源治は一介の町人にすぎず、相手は直参旗本、しかも時の老中松平越中守を伯父に持つという血筋を誇る男だ。嘉門に刃向かっただけで、源治はその場で手討ちにされてしまうだろう。
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