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石榴(ざくろ)の月~愛され求められ奪われて~
第8章 第二話・参
 源治の整った貌に愕きが走った。
 良人の視線が自分の全身を慌ただしく辿るのを見て、お民はうなだれた。
―一体、何があったんだ?
 当然、その質問を予想していたのに、源治は何も言わなかった。
 ただ哀しげな眼で、お民を見つめていた。
「私、また―」
 言いかけたお民の身体がふわりと温かな腕に包み込まれる。
「もう、良い。何も言うな」
 何かに耐えるような表情で、源治は長い間、お民を抱きしめていた。
 かすかな嗚咽が聞こえてくる。源治が男泣きに泣いているのだと判った。
 源治が静かにお民の身体から手を放す。
「どこか、怪我なんかはしてねえな?」
 念を押すように問われ、お民は小さく頷く。
 源治が改めて、お民をしげしげと見つめた。
 抵抗して痛めつけられたため、首には焼印のように男の指の痕がついている。
 源治の手が伸び、お民の首筋にそっと触れた。紅く鬱血した傷痕を、優しい指の感触が撫でる。それだけで、お民は痛みも何もかも、一瞬忘れられるような気がした。
 源治は、しばらくその部分を撫でていたが、結局、その紅い痕についても何も訊かなかった―。
 お民は源治の視線に耐えきれず、そっと顔を背けた。無意識の中に胸許をかき合わせたのは、やはり源治に嫌われたくないという気持ちからだったろう。
 お民は緋色の長襦袢一枚きりという姿であった。まるで、これから客を迎える遊女のようななりである。
 加えて、ここ半月ほどの間に石澤嘉門がお民の周囲に出現していたこと、お民が昨夜から突然、ゆく方を絶っていたことを考え合わせれば、お民の身に何が起こったかと想像するのは難しくはないはずであった。
―この男(ひと)は、私の身に起こったことを全部知っている。
 お民は絶望的な予感に、眼の前が真っ暗になった。
「何があったか、訊かなくて良いの?」
 訊かれたくない、話したくないと思いながら、ついそう言ってしまう。我ながら自虐的な思考回路だと思わずにはいられなかった。
「何も言わなくて良い。―辛かったろう、怖い目に遭ったな。俺はまた、お前を守ってやれなかった。許してくれ」
 源治の言葉に、お民は泣きながら首を振った。
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