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石榴(ざくろ)の月~愛され求められ奪われて~
第8章 第二話・参
 女将は、女の眼を見ながら、ゆっくりと言葉を紡いでゆく。
「生きる気持ちをなくしちゃ駄目だ。あんは、まだ生きてるんだ。だったら、姉さんのように死ぬことなんか考えずに生きな。あんたを連れてきた男とあんたのに、どんな拘わりがあるのかまでは知らない。あの男は別にうちの馴染みってわけでもないしね。マ、見たところ、かなりの身分の武士だろうけどね。あたしは金のためならたいがいのことはするけど、ああいう輩は昔から大嫌いさ。金さえ出しゃあ、何でもこちらが這いつくばって言うことをきくのが当たり前なんて、ふんぞり返ってる奴を見ると、反吐が出る」
 吐き捨てるように言うと、肩をすくめた。
「女にそこまで惚れ込んだのなら、自分の甲斐性で靡かせてみろってえんだよ。仮にも身分のあるお武家がそこら辺のごろつきのように女をかどわかして、手込めにするなんざぁ、世も末だよ。あのお侍はあんたをここに閉じ込めて、囲うつもりだね。いずれは別の場所に移すけど、しばらくはここで預かって欲しいなんて言ってたから、全く何を考えてるんだか、助平で金だけはたんまりと持ってる男の考えそうなつまらないことだよ」
 それでもなお、黙り込んだままの女に、女将は問いかけた。
「あんた、亭主がいるんだろ?」
 女がまたたきし、視線をゆっくりと動かした。
 女の眼に、見る間に涙が溢れた。
「亭主が恋しいのかい?」
 女がかすかに頷いた。
「なら、死ぬことはないじゃないか。恋しい男が待ってるなら、その男の許に帰れば良い。あんたが死んだら、亭主が泣くよ?」
「でも」
 女が初めて口を開いた。
「もう―あのひとの許には帰れません」
 消え入るような声で言うのに、女将はけらけらと笑った。
「こんなに穢れた身体では、もうあのひとのところには帰れない。合わせる顔がありません」
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