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*妄想社長に振り回されて*
第9章 香菜さんと私
「麻希、帰るぞ」

「まだコーヒー飲みおわってないんで」

「麻希……」

「香菜さんはどうしたんですか?ストーカーに狙われてるんですよね?一人にして大丈夫なんですか?」

可愛くないって分かってる。
こんな子どもみたいな言い方。
素直に甘えてくれる方が男の人だって嬉しいだろうっていうのも頭では理解してる。

だけど……やっぱり雅也さんのあの態度は腑に落ちない。
自分から香菜さんに思い出話ふっちゃってるし。
コーヒー飲みすぎてないだろうな?とかそんな心配する前に私の心配しろ!っつうの!

「はぁ、何を拗ねてるんだ?香菜とはもう何も…」

「何もないから会社に呼んだんですか?私だっているのに」

「だからそれはあいつにもいろいろと事情が…」

「ねえ、麻希さん。やっぱ俺にしとけば?」

横入りした桜井くんを雅也さんが睨んだ。
だけど怯む風でもなく桜井くんは真剣な顔で続ける。

「何か話聞いてると社長ってデリカシーなさそうだし。絶対俺のがいいって」

「お前は黙ってろ」

「嫌ですよ。俺、麻希さんのこと好きだもん。好きな人が辛そうなの見てられないでしょ?」

「お前は何にも知らないから…っ」

「じゃあその事情、麻希さんは知ってんの?全部?包み隠さず?言えないこともあるかもしれないけどちゃんと知ってたらこんなことにはなってないんじゃない?」

雅也さんが圧されてるの初めて見た。
悔しそうに怒りを中に押し込めながらお店を出ていく。

「ま、雅也さ…」

「ほっときなよ。ああいう人はちゃんと言わないと分かんないよ?」

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