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第3章 弟の会社
「…っ…そいつの名前…確かに白取? 白取 敏友?」

翔の口から出た”白取”という名前に、琉までもが目を瞠り、紡ぎ出す声も心なしか震えている。

「そうだけど……琉? 大丈夫か?」

見慣れない弟の取り乱した姿に、翔までも取り乱しそうになる。


「…それか…」

ため息と共に吐き出された声にそちらを見れば、白くなる程キツく握り締めた拳を見つめる琉。

翔の心臓が騒ぎ出す。


「ていうか、渚が一緒なのかよ?」

フッと取り巻く空気がいつものものに戻り、拳を解いた琉が翔に聞く。

「白取さんからの要望なんだよ。若い女子社員を連れて来いって」


「……凝りねぇ奴だな」

「え?」

小さく呟かれた琉の声が聞き取れなくて、聞き返した翔。

「なんでもない。愛里咲の事、知られないようにして。あと、渚から目ぇ離すなよ?」

「え? どういう…」

有無を言わさず、言いたい事だけ告げて琉は翔の部屋を出て行く。


「は? で? 結局何なんだよ⁉︎ 」


1人で納得して出て行った弟が、先程までいた椅子を睨む翔。

何故愛里咲があんなに取り乱したのか、ハッキリとはわからない。

だけど…

(明らかに、白取さん絡みだよな……)

そう思えるのに、愛里咲の取り乱し様を思い出せば、これ以上聞くのは気の毒な気さえする。


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