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乳牛メイドのホルスタイン あの、かけがえのない日々のこと
第5章 第4話 海岸線の小旅行
 そろそろお腹が空いてきたということで、坊ちゃまは何か歩きながら食べられるものを露店で買ってくるよと提案した。

 一旦鍵付きの更衣室まで財布を取りに行くつもりの坊ちゃまに私は付いていこうとしたけれど、どのみちここに帰ってくるから待っていてくれていいよと坊ちゃまは言った。

 それなら砂浜を散歩して綺麗な貝殻でも探していようと考えて、私は坊ちゃまと一旦別行動を取ることにした。


 人が多い砂浜の貝殻は踏んで怪我をしないようにか地元の管理官にあらかじめ拾われていたけれど、少し離れた砂浜に来ると大きめの貝殻もよく見かけた。

 形がいいものがあればお土産にしようと年甲斐もなく砂浜にしゃがみ込んで貝殻を探していた私に、誰かが声をかけてきた。


「よう、お姉さん今一人?」
「えっ?」

 顔を上げた私の前には地毛というよりは染髪しているように見える茶色の長髪の男性と彼の友人らしい黒髪を一つ結びにした長身の青年の姿があって、彼らは一人で砂浜を歩く私に目をつけていたらしかった。


「俺とこいつ、上級学校の休みで暇つぶしに来てるんだけど正直やることなくてさ。よかったら向こうの露店で一緒に何か食べない?」
「その、お気持ちはありがたいのですが私は人と待ち合わせをしていまして。それに私は44歳の半亜人ですし……」
「へえっお姉さん半亜人なの? 全然44歳には見えないしおっぱいすごく大きいね、もしかして|乳牛《ホルスタイン》の?」

 茶髪の男性は軽薄そうな表情で私の胸元を見てそう言って、それを聞いた瞬間に私は表情を歪ませて胸元を右手で隠した。

 沿岸の都市の人間族は亜人への差別感情は薄いと聞いているし彼自身は私を侮辱しているつもりではないのかも知れないけれど、身体的特徴をそれも男性から指摘されることに私は慣れていない。

 私は牛型亜人を父に持つ半亜人だから目の前の人間族2人を腕力で振り払ってここから逃げることは|容易《たやす》いけれど、私が人間族とその程度はともかく揉め事を起こしたなどと坊ちゃまに知られて心労をかけるのは避けたい。
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