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助教 沙霧
第5章 通勤路 ~電車内の妄想~
 電車の震動が、彼女の股間を執拗に揺さぶる。タイトなスカートの中、ストッキングに包まれた太ももが密着し、逃げ場のない熱が溜まっていく。

 不意に、背後から誰かの手が、彼女の腰に触れたような気がした。
 それが単なる偶然の接触なのか、それとも意図的なものなのか、確かめる術はない。だが、その正体不明の圧力が、彼女の「被虐」の願望を限界まで引き絞った。沙霧は、噛み締めた唇から血が滲むのを感じる。

 恥ずかしぃ。。。  死ぬほど恥ずかしい。。。

 大学の研究室で、古典和歌の清廉さを語る自分が、今この瞬間、男たちの体温に蹂躙され、その圧力に快楽を見出している。

 誰か、私を見て。
 誰か、この仮面を剥ぎ取って、私の内側に溜まったこの泥濘を、すべて暴き出して。

 心の中でそう叫びながら、彼女の瞳は熱い涙で潤んでいった。

 駅に到着し、ドアが開く。吐き出されるようにホームへ降り立った沙霧は、冷たい空気に触れて、激しく咳き込んだ。膝が笑い、真っ直ぐに歩けない。彼女はホームのベンチに座り込み、乱れた息を整えた。スカートの裾を整える指先が、目に見えて震えている。
 
 今の自分は、一体何者なのだろうか。
 高名な大学文学部の優秀な助教なのか。それとも、見知らぬ男の言葉一つで、公共の場で発情してしまう卑しいメスなのか。
 
 沙霧はバッグの中からハンカチを取り出し、額の汗を拭った。視界の端で、去りゆく電車の尾灯が赤く光っている。それは、彼女の理性を焼き尽くそうとする、誉という名の炎のようにも見えた。
 
 彼女はフラフラと立ち上がり、大学への階段を登り始めた。これからまた、一日中、あの「仮面」を被り続けなければならない。

 だが、その仮面の内側で、彼女の本当の顔は、すでに快楽の残り香に、だらしなく溶け始めていた。
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