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防音室で先輩に襲われて…
第9章 ゴミの無い部屋

(笑ってたんだ)

 相手が気付いていないのをいいことに、乃ノ花は彼を凝視していた。

(笑ってるけど、でもやっぱり、寂しそうだな)

 夜の暗さか、周りの喧騒がそう錯覚させるのか

 乃ノ花はおもむろに、彼が立つコンビニへ足が向きそうになった。

(…!だめ)

 だがすぐに思い直す。

(椎名先輩には、関わっちゃだめ…)

 今の…スマホ越しの声がどこか寂しそうでも、かけられる言葉が優しくても、椎名の本性を忘れてはならない。

 それに、椎名には彼女と違って友達がたくさんいる。寂しそうなんて、思うほうが変だ。

 乃ノ花は再び、家に向かう方向に歩き出した。


『君の家って確か…〇〇区だったっけ?案外、俺の家から近い』

「(ドキッ)そ、そうなんですね」

『なら今も近くにいたりするのかな』

「…!」

『夜道にひとりもなんだし、俺が家まで送ってあげようか?』

「それは…──……い、いです」

(あれ?先輩はわたしに気付いてないよね?こっち見てないし…)

「わたしはひとりで帰れますから…っ」

『…………まぁそうか。俺に家の場所がバレるのは不味いだろうし、やめておいたほうがいい。住所まで知ってしまったら、いよいよ歯止めがきかなくなる』

「……」

『…ふっ、今ほっとしたでしょ?』

「そっそんな!してません!……。……───」

『…本当かな』

「………す、すこし、だけ」

『あっはは!正直だね。というより嘘が下手』

「ほうっておいてください」

『……ああそうだ、今、思いついたんだけれど』

 嫌な予感がして身構えた彼女に、椎名が突然の提案を投げかけた。



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