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防音室で先輩に襲われて…
第9章 ゴミの無い部屋

『どうしてそんな事を聞くの?』

「だって声に元気がないというか…、なんとなくっ…なんとなくです」

『……君って、にぶいのか鋭いのかよくわからない子だね』

「そうでしょうか」

『……ハァ』

 溜息をつかれた。

 何か気の利いた事を言わないとだろうか。だが特に要件は無いと言われているから、それこそ次に何を話せばいいのかわからない。

(電話切っちゃダメかな…)

 余計なことを言わずに、初めから黙っておけばよかった。

(勝手に切ったら絶対怒らせる、けど、切っていいですかって聞いても、やっぱり怒らせるよね)



「あ」



 ピタッ



「…………椎名先輩。いま、どこにいますか」

『外だよ、コンビニの前だけど』

「あー……」

 帰路を歩く乃ノ花は、スマホを耳に当てたままピタリと立ち止まった。

 道路向かいにあるコンビニの明かりの前に、椎名の姿を見つけたからだ。



『ところで君も外にいるんだね?車の音が聞こえる』

「…っ 塾から帰ってきたところで…!」

『ああそうだったよね、お疲れさま。でもけっこう遅い時間なのに歩いて帰るんだね、危なくない?』

「え?今日はたまたまです。いつもはお母さんが車で迎えに来てくれます」

『そうか……そうだよな。君は " 大切に " 育てられているから』

「……」

 椎名のほうはこちらに気付いていないようだ。制服を来たままの彼は、片手をズボンのポケットにいれ、斜め下を向いて微笑している。



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