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One Night LOVE
第1章 ココア
11月5日。
肌寒くなってきたけど、昼間は暑い。
だから、あまり厚着をしていなかったあの日。
夜に雨に打たれて、着ていたスーツはびしょ濡れになった。
家まではまだ遠い…。


ふと顔をあげると、目の前に薄暗い外灯が見えた。
駆け寄ると、レトロ調のドア。
ドアには何も書いていない。
見上げるとアパートのようにも見えるが
お店のようにも見える。


「雨宿りさせてください」


誰もいないし、聞いてもいないのに真面目な性格がでてしまう。
このドアには軒下があって雨宿りができる。
これだけ濡れていたら、濡れても関係ないだろうけど…
これ以上雨に打たれて、惨めな思いをしたくない。
そう思って、ここで雨宿りをさせてもらうことにした。


“キィ……”


まさか、ドアが開くなんて思ってもいなかったため、
私は目を丸くして驚く。
170センチ+ヒールの私より身長が高い男性が
私と同じく目を丸くして驚いている。


「もしかして、雨宿りですか?」
「ごめんなさい、勝手に。帰ります」


深々と頭を下げて去ろうとした瞬間、男性に腕を掴まれた。


「よかったら、中へどうぞ。
こんな雨だから、閉めようと思っていただけなので」


男性の指先の向こうは、
レトロなドアの雰囲気にピッタリの落ち着いた雰囲気のバー。
レコードがあったり、ランプや置物を見ていると、
まるで明治時代にタイムスリップしたようだ。


「素敵…」


中に入るつもりはなかったのに
もっと近くで見たくて、奥へ奥へと足を踏み入れる。


「はい。どうぞ。使ってください」


ふわふわのタオルを肩にかけてもらって気づく。
私はびしょ濡れのため、床に水滴が滴っているのだ。


「ご、ごめんなさい!素敵なお店が…!」


床を拭きたいが、まずは自分を拭かないと…
アタフタしている自分を見て、男性は優しい目をして微笑んだ。


「まずは自分を大事にしてあげて…ほら」
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