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骨の髄まで愛してあげる─サキュバスは初恋を知る─
第1章 初めまして♡こんばんは

夜の帳に支配された街を、時計塔の上から見下ろすのは1人のサキュバスだった。長い緩やかなウェーブを風に遊ばせて、身を包むのは妖艶な黒いドレス。紺碧の瞳に映すのは、街並み···いや、サキュバスのごちそうである色男である。
ぐりゅぐりゅりゅ〜···。
男の精を吸い上げお腹を満たしたのはいつだったか···。
「お腹すいちゃった〜···」
サキュバス、リゼットはお腹を擦りながら獲物を探すようにふわりと宙に浮いた。腹が減っては何とやら。リゼットは空を泳ぐように飛び回り、そして1つのお屋敷の前で止まった。
勘がここだと言っている。
リゼットは誘われるように進んだ先のバルコニーに足を降ろした。
バーチカルウインドウの鍵を魔力で開けて、静かに開ければ、レースのカーテンがふわりと波打ち、リゼットはそろりと足を踏み入れた。
「···おじゃましまーす♡」
窓を閉めてから、キングサイズのベッドに眠る男にぴょんと近づいて、顔を覗き込んだ。銀色の少し長めの短髪に、シャツの隙間から見える逞しい胸板に、リゼットはこくりと生唾を飲み込んだ。
(ああああああああ♡···すてき♡この人に決めたわぁ♡)
体をぶるぶると震わせて、上気した頬とうっとりした碧眼の瞳を細めた。
(なんて···なんて素敵なのかしら♡)
赴くままに、リゼットは男が起きないように魔法をかけた。
そう、食事の最中に目を覚まさないように、瞳に手をあてて。

