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魅惑~甘く溺れる心と身体。
第13章 危険な罠、ふたつの欲望の前にただ狂い咲く……。

 ……パカ、パカ。
 須藤さんは手持ち無沙汰でなのか、数カ所ある鏡台の引き出しを開閉を繰り返していた。

「あいつ、入社以来、社内で失敗したとこなんて見たことないぜ?」

「ですよね、あたしもハイスペックな人だなって思ってました」
 須藤さんのひとりごとのような話しに、あたしもコクンと大きく頷いてみせた。

「だよな。……初めてだったんだよなぁ、ほら、3週間前の――例の、プレゼンの資料忘れ。あれって、前日あたりに森野と何かあった?」

「えっ!?」
 ドキッ!
 須藤さんの質問に心臓が跳ねる。
 思わず顔を上げると、須藤さんの真っ直ぐな視線とぶつかった。

「あ、えと……特に、何もないです、けど……」
 そう、たしかに前日は何もなかった。
 うん、それは間違いない。

 初めて唯斗さんに抱かれたのは3日前。
 だからきっとあたしがきっかけではないと思う。

 ドキドキしながら答えた。

「そうかな? 何か隠してない?」
「何も隠してません!」
「ひとつ屋根の下にいるんでしょ? 抱かれたのはいつ……?」
「い、言いたくありません! 須藤さんには関係ないと思います」

「そういう言い方は傷つくなぁ。俺、言ったよね。澪ちゃんのこと、けっこう本気だって――」

 須藤さんは引き出しから紐を取り出し、すぐ目の前にやって来たかと思えば、あたしの身体を押した。

「っひゃ! 何っ!?」
 勢いよくベッドに倒れ込んでしまう。


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