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僕の愛する未亡人
第2章 はじめての社外業務①

二つ並べられた丸椅子の一つに、壁に背中をつけて座る。
ふぅふぅ、と冷ましながら、カフェオレに口をつけた。
「どう、すっかなあ。今日」
ため息をついたその時。
ふわりと甘めの香水の匂いが鼻をついた。
「……あら。佐藤くん、おはようございます」
「お、おはようございます」
気が抜けていたのに、こんな時間に出社してくる人がいると思わず、椅子から立って挨拶をしてしまった。
「やだ、いいのよ、座ってて」
飯塚冴子(いいづかさえこ)。
理央より四つ年上の四十二歳。独身。
給湯室にも、この室内にも、他に社員はいないのだろう。
給湯室の静けさに、サーバーにセットしたマグカップに、煎茶を注ぐ音が響く。
彼女は、煎茶を注ぎ終わったカップを手にしていた。ウェーブのある黒髪を耳にかけた拍子に、目元の小さなほくろがふっと覗く。
「今日は寝られたみたい。顔色、いいじゃない。安心した」
叱咤のような、しかし親密さを含んだその声に、理央は息を飲んだ。
冴子は理央や佳織と同じく生産管理部で、同じチームの先輩だった。
「え、あっ……?」
「ここんとこ、集中できてなかったみたいだから。仕事」
「え、う……」
「図星だ」
ネイビーのセットアップのスーツで、白いシャツは第一ボタンまで閉められている。
だが、それはむしろ、彼女の持つ色気を隠すようだった。
冴子がこちらに歩み寄り、赤く色付いた石のついたフック型のピアスが揺れる。
タイトスカートの裾が揺れ、思わずごくり、と理央は唾を飲み込んで、視線を泳がせた。
コツン、と床に当たるヒールの音が目の前で止まる。
「あたしはいつもこの時間。一番乗りが普通なんだけど、早かったんだね」
彼女は性的な視線に気づいているはずだった。
だが、まるでそれに気づかなかったように、落ち着いて理央に話しかける。
「い、いや……早く寝すぎちゃって。夜中変な時間に起きたんです。てか、僕、そんな仕事集中できてなかった…?」
「うん。何かぼーっとしてた」
長机に太ももの左側を当てるようにしながら、冴子は理央を見下ろす。
甘めの香水の匂いが、狭い給湯室に満ちていく。
「ごめんなさい」
しゅん、と理央は下を向いた。
「何で謝るの、怒ってるんじゃないから。心配しただけ」
ふぅふぅ、と冷ましながら、カフェオレに口をつけた。
「どう、すっかなあ。今日」
ため息をついたその時。
ふわりと甘めの香水の匂いが鼻をついた。
「……あら。佐藤くん、おはようございます」
「お、おはようございます」
気が抜けていたのに、こんな時間に出社してくる人がいると思わず、椅子から立って挨拶をしてしまった。
「やだ、いいのよ、座ってて」
飯塚冴子(いいづかさえこ)。
理央より四つ年上の四十二歳。独身。
給湯室にも、この室内にも、他に社員はいないのだろう。
給湯室の静けさに、サーバーにセットしたマグカップに、煎茶を注ぐ音が響く。
彼女は、煎茶を注ぎ終わったカップを手にしていた。ウェーブのある黒髪を耳にかけた拍子に、目元の小さなほくろがふっと覗く。
「今日は寝られたみたい。顔色、いいじゃない。安心した」
叱咤のような、しかし親密さを含んだその声に、理央は息を飲んだ。
冴子は理央や佳織と同じく生産管理部で、同じチームの先輩だった。
「え、あっ……?」
「ここんとこ、集中できてなかったみたいだから。仕事」
「え、う……」
「図星だ」
ネイビーのセットアップのスーツで、白いシャツは第一ボタンまで閉められている。
だが、それはむしろ、彼女の持つ色気を隠すようだった。
冴子がこちらに歩み寄り、赤く色付いた石のついたフック型のピアスが揺れる。
タイトスカートの裾が揺れ、思わずごくり、と理央は唾を飲み込んで、視線を泳がせた。
コツン、と床に当たるヒールの音が目の前で止まる。
「あたしはいつもこの時間。一番乗りが普通なんだけど、早かったんだね」
彼女は性的な視線に気づいているはずだった。
だが、まるでそれに気づかなかったように、落ち着いて理央に話しかける。
「い、いや……早く寝すぎちゃって。夜中変な時間に起きたんです。てか、僕、そんな仕事集中できてなかった…?」
「うん。何かぼーっとしてた」
長机に太ももの左側を当てるようにしながら、冴子は理央を見下ろす。
甘めの香水の匂いが、狭い給湯室に満ちていく。
「ごめんなさい」
しゅん、と理央は下を向いた。
「何で謝るの、怒ってるんじゃないから。心配しただけ」

