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家は檻。〜実父の異常な愛〜
第7章 荊棘の視線
四月も半ばを過ぎる頃、こよみたち六年一組は、少しずつ“最上級生”という肩書きに慣れ始めていた。
教室の空気は、春の光と一緒にゆるやかにゆらいでいる。

担任の滝本は相変わらず大きな声で、元気いっぱいに教壇に立っていた。
けれど彼の言葉の端々に「もう六年生だからな」「最上級生としての自覚を持とう」といった口癖のようなフレーズが加わるようになっていた。
先生の明るさは変わらない。でも、生徒たちの態度には、すこしだけ“だるさ”が混じってきている。

春人があくびをかみ殺しながら、滝本の話を聞いている。
山下がプリントをくしゃくしゃにして丸めて投げた。
「やめなってば」
佳乃が小声で注意するけれど、山下はどこ吹く風だ。
隣の岡田は、笑いをこらえながら手でキャッチしていた。

こよみは静かにそれを見ていた。
騒がしさが増した教室は、五年生のころよりもちょっとだけ息苦しい。
でも、自分の居場所は、きちんと守られている──そう思いたくて、毎朝同じように席に座り、同じように筆箱を開ける。

「よし、今日はグラウンドで体育祭の練習だ!体操着に着替えて集合なー!」
滝本の声に、教室の空気が少しだけ軽くなる。
「うぇー、もう?ダルっ」
「運動会とかガキかよ」
そんな声が男子から飛び交うなか、女子たちはそれぞれ更衣室へ向かっていた。

こよみは、佳乃と一緒に体育館脇の女子更衣室に入った。
新学期になってまだ数週間だが、誰もが少しずつ変化していた。
背が伸びた子、声が太くなった子、髪型を気にし始めた子。
そして、笑い声のトーンまでもが、去年より低くなったように感じる。

更衣室の中では、馬場が鏡の前で髪を束ね直しながら、
「今年のリレー、女子のタイムめっちゃ重要になるってさ」
と、声を張っていた。
馬場の周りには、いわゆる“女子一軍”たちが自然に集まっていた。
その光景を遠目に見ながら、こよみはそっと体操着をたぐり寄せた。

Tシャツの裾をめくるとき、指が一瞬止まる。
胸の膨らみが、いつかよりわずかに大きくなっていた。
まるで自分の身体が、自分に黙って先に進んでしまっているような、そんな感覚だった。

更衣室の扉を開けると、日差しが校舎の壁に真っ白く反射していた。

──この春、何かが変わろうとしている。
それが、良いことなのか、悪いことなのかはまだわからなかった。
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