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家は檻。〜実父の異常な愛〜
第5章 初花
夏の日曜の朝。
洗面所の鏡の前で、こよみは顔を洗い、歯を磨く。
湿気を含んだ髪が頬に張りついて鬱陶しく、手で払いながらふと鏡を見ると、パジャマの胸元に目がとまった。薄手の布地の下に、うっすらと丸みが浮かび、乳首の位置がくっきりと透けていた。

自室に戻ってから、こよみはパジャマのボタンを外し、上からそっと胸元を見下ろした。
丘のようにふくらみ、谷のようにへこんでいる。昨日まで気のせいだと思っていた変化が、もうはっきりと目に映る。触れればわずかに弾力があり、頂点には、つんと尖った乳頭が小さく主張していた。

こよみはタンスを開け、下着の引き出しを眺めた。並んでいるのは白や水色のキャミソールだけ。
みんなはどうしているんだろう。いつから、どこで、どんなふうにブラジャーを買うんだろう。
佳乃ちゃんに、聞いてみようか。そう思ったが、恥ずかしさが先に立ち、しばらく引き出しの前で固まってしまった。

その日一日、胸元が気になって仕方がなかった。
エプロンの内側で乳首がこすれるたび、びくりと意識が向く。洗い物をしていても、掃除をしていても、いつもと同じ動作なのに、胸の部分だけが敏感に反応していた。

夜、湯船に浸かったこよみは、風呂の鏡に映る自分の体を見つめた。
胸が、明らかに“女の子”の形に変わってきている。乳首も、以前より少しだけ色が濃く、かたちがはっきりしていた。湯の中でそっと胸を抱えるようにして、ふくらみを確認する。
明日、学校で佳乃ちゃんに相談してみよう。そう思いながら、ゆっくりと浴槽から立ち上がった。

髪を拭き、パジャマに着替え、部屋に戻る。カーテンを閉め、机の上の時間割を確認してから、階段を下りた。
引き戸の隙間から漏れる灯りを見て、こよみの胸が少しだけきゅっとなる。

今夜も、行かなければならない。
お父様の部屋へ。

胸が、ちくりと痛んだ。
その痛みが、成長のせいなのか、気持ちのせいなのかは、こよみにもわからなかった。
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