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柔肌に泥濘んで、僕は裏返る
第12章 過ぎ去りし爛れ
気づけば、受験という現実に押し流され、あの夜を抱えたまま、学校生活は終わりを迎える。

裕樹はなんとか大学受験を終えたが、葵の進路については最後まで分からなかった。

確かなのは──もう二度と交わらないだろうということ。

卒業式の日、裕樹は最後に葵の姿を探した。

また誰にも言えない、二人だけの関係の針が動き出すのではないか。

そんな奇跡を望みながらも、ただ感謝と謝罪の言葉を伝えられるだけでも良かったかもしれない。

結局見つけられたのは、人波に紛れて消えていく黒の艶髪だけだった。

──ありがとう、そして、ごめん。

裕樹の胸の奥で、自然にその言葉が浮かんでいた。

女神の彫像のような肉体を、惜しみなく差し出してくれたこと。

初めての夜を与えてくれたこと。

自分の欲望を受け入れてくれたこと、そして、それに巻き込んでしまったこと。

あの夜から直接伝えたかったその気持ちも、野暮だと思って最後まで飲み込んだままになった。

後ろ姿に伸ばしかけた手を止めながら、裕樹は胸の奥に熱を抱えた。

それが感謝なのか、渇望なのか──裕樹自身でも確かめきれず、答えのない問だけが、胸の奥に残った。


              ─学生時代篇─ 完
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