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純潔の檻 ―敵国の騎士に囚われて―
第1章 堕ちた城
「王女でなければ、ここで斬っていただろうな。」

ゼノはそう言いながら、私に一歩近づく。

鋼のような胸板、重い鎧の音が響くたび、空気が揺れた。

「だが……お前は、あまりに美しい。」

その声に、私は思わず息を呑んだ。

金色の獣は、敵国の姫を前にして理性を揺さぶられ始めていた。

そして私は、その視線の熱に、初めて“女”として見られたことを――

恐ろしくも、意識してしまった。

私を乗せた馬が、砂塵の中を駆け抜ける。

背中に感じるゼノの体温は、冷たい鎧越しにもはっきりと伝わった。

――こうして私は、国を失い、敵国へと連れ去られた。

たどり着いたのは、ヴァルゼン帝国の黒曜の城。

荒々しくも重厚な石の壁に、威圧的な鉄扉。

すべてが私の知る宮殿とは違い、どこまでも冷酷で美しかった。
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