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純潔の檻 ―敵国の騎士に囚われて―
第1章 堕ちた城
やがてカイルが唇を離し、舌をひと舐めして吐息を漏らした。

「ふぅん……なかなか味がある。」

その声音には明らかな欲と、弟を試すような意図が滲んでいた。

「おまえ……この女を気に入っているだろう?」

その言葉に、私の心臓が跳ねた。

まさか……ゼノが、私を?

私はゼノを見た。だが彼の目は、依然として床に落ちたまま動かない。

そして、静かに口を開いた。

「兄上の仰せのままに。」

一瞬、何かが砕けたような音が胸の奥で響いた。

その声は従順で、冷たく、どこまでも騎士らしい――

だが、そこには確かに葛藤があった。

見ないようにしていた何かを、飲み込んでしまった男の声音だった。

カイルはそんな弟を見て、くつくつと笑った。
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