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社長は彼女の“初めて”を知っている
第2章 一夜
「……ん……」

声を抑えたつもりなのに、喉の奥から甘い吐息が漏れた。

見られるだけで、こんなにも感じてしまうなんて。

「綺麗だ、玲奈。」

その一言に、私はまた涙がこぼれた。

「……私、綺麗?」

誰にも言われたことがなかった。

カメラ越しの“被写体”としてではなく、ひとりの女として、真正面から見つめられ、そう言われたのは、初めてだった。

「うん。とても、綺麗だよ。」

加賀見さんが、自分のシャツを脱ぐ音がした。

ボタンが外れ、体温を孕んだ肌が現れる。

彼も──裸になる。

そして、私の体をふわりと包むように、抱きしめてくれた。

あたたかい。
強くて、やさしい。
これが、“温もり”というものなんだ。

胸が詰まりそうになった。
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