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社長は彼女の“初めて”を知っている
第2章 一夜
芸能人としての私を見てきた人。

演技と現実の境界を見抜いてくる人。

唯一、嘘のない私を知ってしまった人。

「……加賀見さんだったら、教えてくれそうな気がして。」

言い終える前に、私はそっと体を起こして、この前と同じように、彼の唇に自分の唇を重ねた。

一度目のキス。
彼は動かなかった。

でも、拒絶もしなかった。

二度目のキス。
今度は、彼の唇がわずかに応えた。

──それだけで、涙が出そうだった。

私の願いは、届いている。

この人の中で、少しずつ何かが壊れ始めている。

そして、三度目のキス。

加賀見さんの腕が、私の背に回った。

ふわりと、でも確かに、抱きしめられる。
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