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社長は彼女の“初めて”を知っている
第2章 一夜
「……そう、ですよね」

震える声でそれだけ言って、うつむいた。

それ以上何か言ったら、きっと泣いてしまうと思った。

加賀見さんは何かを言いかけたけれど、口を閉じたまま沈黙した。

その沈黙が、余計に苦しかった。

(私の気持ちは、ただの酔っ払いの戯言だったのかな。)

そう思った瞬間、ぽたり、と涙が落ちた。

枕に染みるその音が、やけに大きく聞こえた。

「……私、愛が何か、知りたくて。」

ぽつりと呟いたその言葉が、静かな寝室に落ちた。

加賀見さんは黙ったまま、私を見ている。

でも視線の奥で、なにかが揺れていた。

「皆経験してるのに、私……知らなくて。」

CMでは、恋をしているように見える。

ドラマでは、甘く抱きしめられているように映る。
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