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社長は彼女の“初めて”を知っている
第2章 一夜
居酒屋の外、夜の空気がじわりと熱を奪っていく中、私の隣には加賀見さんがいた。

「大丈夫か? 玲奈。」

低い声でそう言って、私の腕を軽く支えてくれる。

その手の温度が、火照った肌に心地いい。

「……ねえ、加賀見さん。」

「ん?」

「……キスして。」

言ってから、顔が一気に熱くなるのがわかった。

でも止められなかった。

この夜の高揚に任せてしまいたかった。

この人にすべてを預けて、なにかが壊れてもいいと思った。

しばらくの沈黙。

彼は一歩だけ距離を詰めるようにして私を見つめたあと、小さく笑って、言った。

「……ここではしない」

はい、あっさり撃沈。

路肩の灯りがにじんで見える。

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